担当:佐藤 峻
題目:short-pulse方程式に対するノルム保存自己適合動的格子差分法(研究紹介)
概要:
short-pulse方程式はホドグラフ変換と呼ばれる変数変換によってsine-Gordon方程式に変換できる.この変換を利用して,short-pulse方程式の数値解を,sine-Gordon方程式の数値解を用いて構成することができる[1,2].
このとき,空間方向に一様な格子でsine-Gordon方程式の数値解を構築することによって,short-pulse方程式に対しては弧長に関して一様な格子が構築できるため,「自己適合動的格子差分法」と呼ばれる.
特に小熊[2]はsine-Gordon方程式に対する離散変分法を用いることで,ある境界条件下におけるshort-pulse方程式の数値解法を構築した.
この場合には,境界条件の成立のために離散変分法が保証する不変量を利用するため,short-pulse方程式の保存量を離散化後にも引き継ぐような離散化を考えることは困難である.
一方で,short-pulse方程式は,異なる変数変換を用いることでcoupled dispersionless方程式と対応づけることもでき,この事実を用いて数値解法を構築することもできる[3].
本発表では,coupled dispersionless方程式に対する保存解法を利用することで,short-pulse方程式に対するノルム保存自己適合動的格子差分法を構築する方法を提案する.さらに,異なる変換対への適用や一般化についても論じる.
参考文献:
[1] B-F. Feng, J. Inoguchi, K. Kajiwara, K. Maruno, and Y. Ohta. Discrete integrable systems and hodograph transformations arising from motions of discrete plane curves. J. Phys. A, 44:395201 (19pp), 2011.
[2] 小熊和仁.ホドグラフ変換を用いた偏微分方程式の動的格子差分スキームの構築,東京大学大学院情報理工学系研究科 修士論文,2014.
[3] B-F. Feng, K. Maruno, and Y. Ohta. Self-adaptive moving mesh schemes for short pulse type equations and their Lax pairs. Pac. J. Math. Ind. 6:7–20, 2014.