担当 : 松尾 宇泰
題目 : 中心差分型作用素に対する離散不等式について
概要 :
保存量を保つ特殊な数値解法の利点のひとつは,連続系においてその保存量が何らかの事前評価を導く場合に,離散系でも同様の評価が得られる可能性があることである.そのためには,連続系の関数解析における各種微積分不等式の離散版が必要になる.たとえば非線形Schroedinger方程式の解の事前評価では,Sobolev不等式やGagliardo–Nirenberg不等式が基本的であり[1],その離散版は,最も基本的な前進差分作用素の場合には,John [2]やFurihata–Matsuo [3]などにより示されている.
一方,数値解法の観点からは,より高精度な差分作用素の援用が期待され,実際,高精度中心差分型作用素を用いた保存解法がMatsuoら[4]において提案されているが([3]も参照のこと),これらの作用素に対応する離散版微積分不等式の成立は,長い間未解決であった.
この問題に対して,極めて最近,Kojimaら[5]によって,初の肯定的な結果が与えられた.本発表では,この概要を紹介するとともに,依然として未解決で残されている問題点について述べる.
参考文献:
[1] Brezis, H., Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, Heidelberg, 2011.
[2] John, F., Lectures on Advanced Numerical Analysis, Gordon and Breach, New York, 1967.
[3] Furihata, D. and Matsuo, T., Discrete Variational Derivative Method, CRC Press, Boca Raton, 2011.
[4] Matsuo, T., Sugihara, M., Furihata, D. and Mori, M., Spatially accurate dissipative or conservative finite difference schemes derived by the discrete variational method, Japan J. Indust. Appl. Math., 19 (2002), 311–330.
[5] Kojima, H., Matsuo, T. and Furihata, D., Some discrete inequalities for central-difference type operators, submitted. (Also available as METR2015-05.)